FFBE幻影戦争、どこにそんな体力が

2023年10月23日月曜日

FFBE幻影戦争

t f B! P L

小さな女の子、その家族、その誰もがみんな、頭にヨッシーの被り物をして歩いている、そんな仲睦まじい光景を見たとき?


いいや違う。


新世界の高架下でおっさんとおっさんとがすごいスローな殴り合いを、形相だけ必死で行っているのを見たとき?


いいや違う。


知り合いと酒を飲んで何でもない会話をしているとき?


いいや違う。


僕が昨日一番笑ったこと。

それは本当に急にやってきた。


声に出して笑った。一人で。腹がよじれるくらい笑った。深夜に。一人で。


その日、友人と酒を飲んでいたので、家につくのがいつもより遅くなった。

道中ではユニバ帰りであろう仲睦まじい家族、それから殴り合っている老人を見た。おおよそ人が日常で起こしうる中で天と地ほど差のある光景、及び行為だけれども、どちらも少し酔いのまわった僕を笑わせるには十分な光景だった。


家につき、冷蔵庫からビールを取り出し口に運ぶ。


そして、なんの思い付きだろう。

酒が入っていることで思考回路が普段よりも違っていたのかもしれない。


ふと、幻影戦争がもうすぐアニバーサリーなことを思い出す。

何週間とプレイしていないゲームのことをふと思い出す。誰にでもそんな夜はあるのかもしれない。あるいはそれは実家の両親の事だったり、あるいはゲームの事なのだろう。


そうして、何か新しい機能、例えば信銘石のような、のお知らせでも入ってるかもしれない、など幻影戦争を起動するための動機づけを自分で強固にしていく。

なぜだろう、僕は自分の中に芽生えた動機を自らでこうして錯覚させなければ、ただアプリを立ち上げるという本当にささいな動きでさえ行動にうつせない。


そうして色々な動機、例えば、今ちょうどスマホを手に持っているから、この間新調したイヤフォンの調子を確かめるいい機会だから、今日が晴れだったから、今日は少し乾燥しているから、女の子が頭に付けていたヨッシーが少し右に傾いていたから、おじさんがパンチというより相手の足を引きずろうととにかく足を狙いに行っていたから、この味がいいねと君が言ったから、を存分に積み上げていく。


ビールを一口、口に含む。


ようやく決心したようにアプリを立ち上げる。


期待していた白字にロゴが書かれているタイトル画面ではないことに少しだけ目がいく。白髪の少年が悪そのものと対峙しているようなイラストだった。


そうして、タップ。


暗転した画面が続く。

アニバーサリー分の読み込みをしているのだろう。

いつもより少し読み込みが遅い。右下ではダチョウに似た生物がいつもより余分に走っていた。


そしてアプリが起動し、いつのキャラなのかもう忘れてしまったが、水着を着ているのだから夏に実装されたキャラなのであろう、銀髪の水着の女の子が暗くどんよりとしたハロウィーン仕様の背景を背に不格好に映し出される。


束の間、新しくポップアップが表示される。

カムバックキャンペーン。ログインボーナス。それらを2,3受け取る。ビールを少しすする。


そして、またしてもあらわになった水着とハロウィーンのミスマッチをよそに、アニバーサリー関連の新着情報を見るためにおしらせを開く。

目に飛び込む。


……



「FFBE幻影戦争、舞台化決定」


……



どこにそんな体力が。


まるで予想していなかった文面に思考が崩れる。

まだサービス終了のおしらせの方が現実味がある。舞台化?幻影戦争が?僕の知っている「舞台」という単語の意味すらも疑うほどに、頭が情報の再構成を必死に行っているのがわかる。


そして、しばらくしてのち、ようやく、FFBE幻影戦争が舞台化する、という文面通りの情報を脳が受け入れる。


人間というのはここまでシンプルな見出しを理解するのにここまで時間がかかるのかと思う。幸いだったのはこの「幻影戦争が舞台化決定」という文字列が、高速道路の電光掲示板で流れていなかったことだ。

もし流れていたならいたるところで玉突き事故が発生していただろう。少なくとも僕は事故を起こす自信がある。


今日一日で一番笑った。

ああ、本来の人間の笑いというのはここまで純粋な笑いなのだ、と清々しい気分にすらなる。何かが混じっているわけでもない、ただただ純粋な笑い。


しかしながら同時に思う。

出不精な僕からすると家族でユニバーサルスタジオジャパンに行くことよりも(そして、老人が老人と喧嘩するよりも)、さらに、輪をかけて、どこにそんな体力があるのかわからない。


ああ、僕だけが体力という概念の起こす波にのまれてしまったのか。

世の中の体力は実は有り余っていて、普段ないふりをしているだけなのかもしれない。


そうしてそういうふりを散々しておいて、僕みたいな、それに甘えた獲物を待ってましたとばかりに捕らえ、ガブリと後ろからかじりつくのだろう。


僕はビールをまた、一口すする。

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