鈴蘭の剣にてチュートリアルガチャで仲間になる紅のハヤブサというキャラがいる。序盤、キャラが揃っていない頃はパーティに入れていたユーザーも多いのではないだろうか。
ここでは、そんな被ダメ時のパタリロみたいな食らい方がおちゃめな紅のハヤブサの命名権について考察したい。
あと数日で紅のハヤブサの命名権が手に入るため、ここでいったん整理しておく必要があると感じたためだ。
パルシのルシのコクーンの…
「紅のハヤブサ」というこのキャラの異名、もとい座右の銘がどこからどう来てどこに向かおうとしているのか、まずはそこから考える必要があるだろう。
ケース①周りがそう呼んでいるパターン
ケース①として、このどこにでもいそうなOLのような顔をしている人物を周りの人がその能力を恐れて「紅のハヤブサ」と呼んでいるケースから取り上げる。
例えばであるが、古くは出雲阿国、近くは大阪のモーツァルト、もっと適度に生活に密着したものであれば静岡の荒ぶる竜、のような座右の銘がある。
こういったものはこのケース①、つまり周りの人がいつと知れずその人をそう呼ぶようになったのだろう。
出雲阿国は正直本名かもしれないので今回の例には向かないかもしれないが、それ以外の二つでいうのであれば、どちらも場所とその人物の人となりがなんとなく伝わる単語がミックスされ、座右の銘として成り立っていることがわかる。
「ふむふむ、大阪の…、あー、モーツアルトと言えばあの偉大な音楽家か!つまり大阪を代表するような音楽家なんだなっ!」であるとか「ひぇー、荒ぶる竜ということはきっとヤクザみたいな感じでサングラスに胸元開いた赤いYシャツなのかアロハシャツなのかの上に、白いスーツ着てる感じの、歯何本かかけてる人じゃないかぁ…、静岡には行かないでおこう」という風にそれだけでどういう人物かわかるというのが特徴だろう。
以上を踏まえて立ち返り「紅のハヤブサ」を見てみよう。
そもそもこの「紅」とは何を指すのだろう。
彼女のどこらへんに紅感があるというんだろう。服の色を言っているのか。いいやそんなはずがあるわけない。まずそれを言うならほとんど黒色だし、マントが赤いだけで紅とはいかがなものか。
というより大事な上の句をそんな着ているものの色で使ってしまうはずがない。それでは冬服どうするのって話にもなるし、だからこその上の句は地名のような変わりようのないものが占めるはずなのだ。
そうすると紅とは。
わからない。
仕方がないので紅を置いておいて、続く「ハヤブサ」を見てみよう。
ハヤブサと言えば猛禽類に分類される鳥の一種で、なんだかいろいろ速そうなイメージが特に日本人は持っている気がする。これは先行研究によるように縄跳びのハヤブサ飛びのイメージが大きく影響している(参考論文2「ハヤブサ飛びとハヤブサについてのイメージ調査-1985年-京都大学江島教授ら」)。
しかしながら実際、ハヤブサは時速390kmで飛翔するきわめて敏捷性の高い鳥であり、なるほど、確かに下の句の「ハヤブサ」に関してはこの女性の持つ移動範囲、そして攻撃の苛烈さをものの見事に表しているといえよう。
ただ、それでは移動範囲が広く、攻撃力のある女性を「ハヤブサ」と呼ぶか、と思いを馳せるとそれはどこか難しい気がする。
そうであるならば陸上生物で同じく俊敏性の高い、チーターであるとかそういった生物の方が適しているし、女性ということからも「女豹」という言葉があるように、ネコ科に例える方が周りがその女性の座右の銘を決めるとするならば適していると考えられる。
なにより筆者がもし移動範囲の広く、どう猛な攻撃力を持つ女性に座右の銘を与える(そんな機会が私の人生であるのかわからないが)のであれば、豹やチーターをつける。
ケース②自分で座右の銘を決めたケース
ということでケース①の他人がこの女性を見て、「紅のハヤブサ」と呼びだした、というのはどうにも無理がある。
そうなる場合に考えられるケースが、自分でこの「紅のハヤブサ」呼びを始めた、というケースだ。
実際問題、先ほどケース①の例に挙げた、静岡の荒ぶる竜、なんかはたぶんだが酔った勢いで静岡の荒ぶる竜さん事、田中一平さんがホステスかなんかに「オレぁ、ここら一帯じゃ、静岡の荒ぶる竜って呼ばれってかんね」とか語ったのが最初だろうと思う。
じゃないと人間を竜に、しかも荒ぶる竜に例えるというハイセンスさが、人間にあるとは思えない。もしかするとそうではなく背中の刺青が荒ぶる竜なのでそのまま誰かが読んでの静岡の荒ぶる竜なのかもしれないが。
こんなふうに自分の座右の銘を自分で決めてしまうことは往々にしてある。
そうしてこのタイプの座右の銘は、ケース①に比べて、何を表しているかがあいまいであるケースが多い。というのも本人がそう呼んでほしい、という願望で提出した座右の銘なので、周りからするとなぜその座右の銘なのかわからないことが頻発するからだ。
「紅のハヤブサ」。
確かにどう猛さとその飛行速度からハヤブサというのは一定の理解はできるが、そうであるならチーターや豹。
紅至ってはもうわからない始末。
これは前述したケース②の座右の銘の発生事由に見事に一致していると考えられる。ここから導き出される結論として、この女性は自らの座右の銘をどこか、例えば、そう、それは戦場の…、
それは秋のはじめ、まだ暑さの残るそんな季節だった。火の手が上がる。敵味方もはやわからない怒声があたり一面響く。
そこに兵士が一人。残暑の暑さか、敵の放った火矢のせいか、蒸し暑い。喉を伝う汗がすすを食ってどす黒く濁る。
- 雑魚味方A「クソ!なんて強い敵なんだ、こんなの勝てっこない…
- 雑魚味方B「う、うわぁあああ、まだ、し、死にたくない…
- のちに紅のハヤブサと名乗る女性「任せろっ!
シャキーン、シャキーン、ドサっ。
- 雑魚味方A「…!あ、ありがとう…!
- 雑魚味方B「こ、これで故郷のタエちゃんにまた会える!本当に、本当にありがとう…!
- のちに紅のハヤブサと名乗る女性「ふっ、死ぬなよ、そして勝利のため戦え
- 雑魚A&B「はいぃぃ!あの、お名前は
- のちに紅のハヤブサと名乗る女性「名乗るほどのものではないが、みなには『紅のハヤブサ』と呼ばれている…
- 雑魚A&B「紅のハヤブサ』!なんて凛々しいッ!故郷のみんなに話しますッ!
はいでたー、紅のハヤブサ。
実際の出自は闇の中だが、だいたいこんな感じだろう。かっこいい感じで、なんかいっちゃった、的なそういう感じだろうと思う。
それら踏まえての命名の考察
長くなったが、そういった彼女のバックボーンを知れたことで命名権の使い方がある程度はっきりと見えてきたように思う。読者の方も同じ思いだろう。
まー、きっとたぶん浅慮な人は、バックボーンなんて気にせず「紅の豚」とか名づけるんだろうと思う。…実際私もそれでいいかな、と思っていた。
後はライトニングさんでもいい気がしていた。中二病なのであれば、パルシのルシのコクーンのライトニングさんでいいだろう、と。
でも、ここまでこの女性のバックボーンを探ってきた私たちには違う結論があると思う。
自らを「紅のハヤブサ」と名乗る女性が最も輝く命名、それはそう、”本名感”ではないだろうか。
たぶんではあるがこの女性が「氷室麗奈」という本名であるなら、自分のことを名乗るときにわざわざ「紅のハヤブサ」とは名乗らないはずなのだ。
だって氷室麗奈の方がかっこいいから。
そうであるならこの女性の本名はたぶんきっと、平均的本名を軽く下回る野暮ったい本名であると導き出される。
- 小森祥子
いやまだちょっと良すぎる。というか「小森」の持つちょっとかわいいニュアンスが合わない。
- 江頭絹枝
江頭という語感、もとい芸人名に頼りすぎていてなんかいや。
- 窪沼静江
……
…
来た。来てしまった。
「窪沼静江」。
多分、おそらく、この世で最もアイドルに向かない名前、そして醸し出される無限の野暮ったさ。窪沼静江と書いて野暮ったいと読んでもいいくらいに野暮ったい。
TSUTAYのバイトでしか見ないネーム。
これはもう完全に全てを兼ね備えている。…全国の窪沼さん静江さんごめんなさい。
決まった。
数日後、私の端末の鈴蘭の剣、紅のハヤブサはもう過去の異名、ここにはただ、本名で暮らす窪沼静江がひっそりとユニット一覧に表示されることになる。
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