ん?え、ペレ?
ああ、あのサッカー選手の?
あんまりサッカー知らないボクでもペレくらい知ってる。バカにしちゃあいけない。ポケモン知らなくてもピカチュウは知ってるってのと同じ。
ペレなー。
なんかすごいサッカー選手だったんでしょ。あんまり知らないけど。日本人じゃないってことは分かる。
ごめんそれくらいしかペレについては書けない。ググりながら書けばいいんだろうけど、ググりながら書いたらそれってもう各自がググってその先の記事を読めばいいだけで、もう二番煎じ。
そう、そんなのもう二番煎じ。
僕は世の中で二番煎じっていうのが一番嫌いで、小学校の文集にも一番嫌いなもの、の所に酢豚と並んで二番煎じと書くくらいだった。
二番煎じが一番嫌いっていうのはなんか数字的な錯視的なそういうふるまいすら醸し出してくるけれども。
え?ペレー…?え、なに?ああ、酢豚ね。
いや酢豚ってあれなんなん。
なにあの恐ろしく負のハーモニーを口の中で作り出す食べ物。
酸っぱい肉だんごは全然美味しいよ、酸っぱいニンジンも美味しい、酸っぱい玉ねぎは…まあイタリアの昔ながらのドレッシング、みたいな塩、オリーブオイル、酢、みたいなサラダなら美味しい。
酸っぱいシイタケは…、いやまあ単品で食べればまだ食べられるのかもしれない。
問題はそれら4強が集った時の破壊力たるや。
初めて酢豚食べたときはこんなにヤバい食べ物が世の中にあるのか、と戦慄した。それまで食べた一番ヤバかった料理が鶏肉のオレンジソース煮っていう父親がなんの思いつきか急に時間かけて作ったやつだった。
名前からしてすでにヤバそうではあった。鶏肉のオレンジソース煮って。字面が七面鳥のクランベリーソースじゃん。日本の食べ物ではないのがネーミングで既にわかる。
たぶんみそ汁とか食べてる人が食べていい食べ物じゃない。鶏肉のオレンジソース煮。舌の構造が違う。クランベリーソースで七面鳥食べたくなる人向けの製品。
んじゃそれらもろもろ見た上で立ち返って酢豚。
酢豚なんてネーミングからしておいしそう。少なくとも鶏肉のクランベリーソース煮と焼き肉、どっちに近いかというとほぼ10割で焼き肉寄りの食べ物だと誰もが想像するだろう。
ヤバい事なんてありえない、素材の味がそのままでもう美味しいやつじゃん。
……
…
んじゃヤバい。
酸っぱい肉だんごが口の中にほぐれ、そのツブツブの中をシャリシャリの玉ねぎが包み込む。すでにヤバい。シャリシャリとツブツブが酸っぱさの上で絶妙に不和をかもし出す。
そしてそこに加わるのがニンジン。
少し食感の残っているニンジンが、シャリシャリとツブツブをボーカルとギターとするなら、ベースのように支えてくる。
本来であれば味に深みが出るところだろうが、ニンジンの硬さのせいで飲み込むに呑み込めない。不和の持続率アップの効果をニンジンがもたらしてくる。
そして、登場するのがシイタケ。
酸っぱいシイタケ。
噛めばその肉厚なシイタケのカサから甘酸っぱいエキスが口いっぱいに広がる。少しずつ失われつつあった、甘酸っぱいシャリシャリとツブツブに、これでもかと新しく濃厚な甘酸っぱさを供給してくる。
……
…
ああ、これは。コーラスだ。少年合唱団がバンドの後ろに見える。
あれ?もうサビ終わっちゃったよ?いつ歌いだすんだろう、ってくらい微動だにしない少年合唱団が曲が2番目に入ったタイミングでその深みのある、そして清らかな旋律をメインボーカルの歌声に合わせてくる。
重厚。恍惚。
じゃなかった。
そう。
もう口の中がヤバい。負のハーモニーで。
ツブツブとシャリシャリがニンジンによって持続させられ、その間ずーっとシイタケから味が供給され続ける。
地獄の食い物か、これ。
地獄のなんちゃら獄、みたいなのあるじゃん熱湯につけられ続ける~、とか針を踏まされ続ける~、とか。
酢豚もその一刑にあってもいいと思う。ずーっと酢豚を食べさせられ続ける~っていう。あの屈強なドイツのスパイでも口を割るだろう。
いや単品で食べたら美味しい。酸っぱいシイタケはたぶん単品でも「うん、これ焼いただけの方がうまいよね」って言いそうだけど。それでも食べられないことはないだろう。
なんでそんな美味いやつらが4人、のそのそ集まってきて、「パァ~!」って効果音でも付きながら、なんかすごいガチャ演出みたいな感じでさ、その中央で光り輝きながら。徐々にその光の中から正体が表れてきてさ。
酢豚。
はい、お待ち!じゃないの。
完全にハズレじゃん。
演出に出来上がったものが見合ってないじゃん。これっぽーっちも見合ってない。ゲームで言うなら「料理失敗!」のやつ。なんかみんゴルのバーみたいなの寝ぼけてて失敗したときに出来上がった料理じゃん。
……
…
うん、ペレーネね、天井だった。
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